今日は『大寒』なのだと、朝の情報番組のキャスターが言っていた。
大寒とは、一年で一番寒くなる時期のこと。
悲しいかな、こんな日に子どもの学校の下校パトロールを担当しなくてはならない。
前回は雨だった。
「貧乏くじばっかり。最悪。」
しかも今日は風が強い。冷たい空気が服の隙間から容赦なく沁みこんでくる。
子どもたちの安全のため、地域の治安維持のためのパトロール。
わかるよ、わかる。大切なことだ。否定はしない。
でも今日は、今日に限っては、寒いものは寒い。
本音を言うと、保護者の務めなどと言う正義なんぞクソクラエである。
冷気を吸い込んだ時の鼻の奥のツンとした痛みに、私は小学生の頃のマラソンを思い出していた。
子どもの頃の私は短距離走は得意だったのに、マラソンは全然ダメ。
走ることのしんどさもイヤだったけれど、順位が全員の目に晒されることが本当に嫌だった。
「イヤな記憶まで蘇ってきて、散々な日だ。」
子どもたちも寒い中で頑張って歩いて下校していた。
暑い日も寒い日も、毎日毎日えらいよな、と素直に思う。
文字通り、雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、である。
まぁ、そうするしかないから、そうするしかない、それだけのこと。美徳でもなんでもない。
「そういえば、本当にベンツで送迎してもらってる、漫画を地で行くような子が昔いたっけ。」
30分間の任務を終える頃には、私の頬は寒さですっかり強張っていた。
いやしかしそれ以上に、耳が冷たさで痛む。
上着をばっちり着込んで、手袋をつけて、歩きやすいスニーカーを履いて出てきたのに、耳は完全にノーマークだった。
刺すような痛みに耐えながら、私は『耳なし芳一』を思い出していた。
耳が見えてるのにお経を書き忘れるなんて不自然だと子ども心に思っていたけれど、申し訳ない。撤回する。
耳は、忘れる。
ピアスを付けていない私にとって耳は、普段あまり意識しない物なんだということを認識した。
「イヤーマフ買おっかな。もふもふのやつ。」
そんなことを考えながら、足早に家に向かった。
普段は帰る途中で、コンビニに寄ってご褒美スイーツを買うのがパトロール後の楽しみだったが、今日は、そんな寄り道をする気も起きないほどに、寒くて痛い。故に一秒でも早く帰りたかった。
今日は、家のこたつでココアなのだ。


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